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ポンピングするな、グレが横向く余裕ができる

先日の『伝心伝承~212~』会長がリモートで喋り倒しの1時間はご覧になられたでしょうか?

もちろん編集で1時間番組となってはおりますが、撮影時間は2時間以上!

会長の釣りに対する想いなど本当になかなか見る事の出来ない貴重な時間だったと思います。

もちろん2時間以上もリモートを通して話すわけですから、終了後にはヘトヘトでした。

 

さて、無事「伝心伝承」も放映されましたので

このタイミングで会長の釣り講座も更新致します!

前回は竿を扱う上での基本講座でした。竿の角度・竿を寝かせるときのタイミング等。

前回のブログはこちらをクリック!

今回はその続き、竿の角度からリールの扱い方について少しお話します。

ポンピングするなって、、、。すごい事言われるな。と感じるのが素人の感覚です。

では、始めましょう!


「細い糸で魚を取るにはゴリ巻きするのが一番や」

 

〇90度の角度を保持できない

 

竿の角度の話を続ける。

道糸に対して竿が90度であれば、竿の弾力がフルに生かせることはみんな知っている。しかし知っている事と、実際にやれることとは違う。

みんなそうしているつもりなのだろうが、現実にはやれてない。

ここまでは前回、解説したが、それはポンピングにも表れていることを知っているだろうか。

魚を引き寄せるときはリールを巻くのではない。竿で寄せておいて、竿を倒しながらリールを巻く。これがポンピングで、魚を取り込む為の基本的なテクニックとされている。

竿を立てたまま強引にリールを巻くのは、ゴリ巻きと称し、それをやれば周囲からさげすまされる。

しかし松田はこのポンピングをも否定する。

ポンピングすれば必然的に竿は90度の角度を保持できない。リールを巻きながら竿を倒した時、どうしても90度以下になる。相当釣り込んだベテランでも、60度から40度にまで倒すこともある。

グレがその瞬間に走ったらどうなるか。竿の弾力がフルに発揮できず、糸は伸びきってしまう。

その結果、糸は切れる。

どうしてもポンピングしたいというのなら、竿を極力倒さないように、小刻みにやるべきだ。

精一杯後ろに起こし、竿を少しだけ倒す間にできるだけ速くリールを巻く。

それを何度も繰り返す。そうすれば竿を90度近い状態で保持できる。

松田のグレをかけたシーンを見てもらえばわかると思う。出来るだけ速く何度も小刻みに行っている。

〇ポンピングするから根に入る

 

ポンピングの欠点はもう一つある。

魚にかかるテンションが一瞬にしろ緩むから、その間にに主導権を握られる可能性があるのだ。

1.75号の竿に1.75号のハリスで締め上げれば、50㎝台のグレでも自由には泳げない。

松田は言う。「反対向いて一生懸命尻尾振るのが精一杯や」

その時、テンションが緩んだらどうなるか。グレは一目散に、手近の岩陰へ逃げ込むだろう。そして、根に入るか、根ズレする。

魚が好きなように走るから、根に入ったり、根ズレしたりする。それなら好きなように走らせなければいい。魚に余裕を与えなければいい。

それが松田のいう「引っ張って引っ張って巻きまくる」ことになる。

もちろん、根ズレしているのに引っ張ってはいけない。地形や足場の関係で、魚を引き寄せると必然的に根ズレする釣り場もある。

糸は強くなっている。が、ショックと根ズレにはまだ弱い。松田でも、根ズレしていると分かったら強引さは影をひそめる。途端に慎重になる。

〇シワ寄せが竿とリールに

 

糸を出すことはしなかったけれど、魚が引っ張った時はリールを巻かなかった。

と松田は自分でそう言う。

ポンピングはしない。糸も出さない。それでも0.8号のハリスで松田は50㎝を超すグレを取った。今でもそれは変わらない。変わらないどころか糸が強くなった分、さらに過激になっている。そのしわ寄せは、もろにタックルに及ぶ。

竿を曲げたままでリールを巻くから、まず道糸が痛む。竿もガイドを切ったり、腰を抜かせたことが数知れずある。リールは1年でギアがガタガタにすり減る。オーバーホールするためにメーカーへ送ったら、これだけ傷んでいるリールは初めて見たと言っていたそうだ。

〇道糸を直線にして高速で巻き取る

 

グレに余裕を与えなければ根に入らないという端的な例がある。

松田はウキが入ったら合わせもせず、竿を寝かせたままで、リールを3倍近い速さで巻いてみた。グレの頭はこちらに向いたままだから、反転する隙を与えなければ魚はこちらの思うようになる。足元まで引き寄せたところで、波に乗せてポンと抜き上げる。

同じようなシーンは四国の牟岐でも経験している。古くから開発されたこの釣り場は魚がスレてしまっているから、1号以上のハリスを使うと非常に食いが悪い。

そこで、まずグレを出来るだけ浮かせる。深いところで食わせると水圧がかかるから、ハリスに余分な負担がかかる。それを避けたのだ。

そしてやはりアタリが出た瞬間に、竿を寝かせてリールを高速回転させた。1号ハリスで難なく40~50㎝のグレが引き寄せられる。

ただし、こうやって寄せたグレは全く疲れていない。足元で緩めると途端に抵抗を始める。磯際だけに、暴れられると厄介だ。さすがに1号ハリスで抜き上げられないから、1発で掬わなければならない。

このテクニックは図のような地形での取り込みに応用できる。

岩棚の先でそれも深場で食うと、通常の取り込み方ではほとんど根ズレする。

そこで、アタリと同時に竿を倒し、高速で巻き取る。竿を立てると、この場合は弾力が邪魔になる。グレに走る余裕を与えることになるのだ。

根ズレが全く防げるわけではないから、1尾釣っただけでハリスはズタズタになる。

そのたびに交換はしなければならない。


ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より一部引用ー