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選択場所の決め手は、、、

さて皆様本日、会長のチヌ釣り講座は一旦最終回です。

春先の乗っ込みチヌについての釣り理論。

前回は『チヌの索餌は出世型』でした。乗っ込みチヌの餌の食べ方、浮き方。

そして本日は乗っ込みチヌを釣る際の場所選択の決め手です。

 

では、いっちゃいましょうか!!

 

 

会長(以下、太文字)さっきの話にちょっと戻るけど、君は釣況データから釣れてる釣り場を選んで出かけると言うとったわな。そんなら聞くけど、好釣果の釣り場が全く行ったことのない釣り場やったらどうする?

 

Question(以下Q)「そうですねぇ。何とか捜しながら行きますね。」

いやいや、場所のことを聞いてるんと違うんや。そらぁ場所は捜しもって行けるやろう。そやけど、釣り場に着いてから、ポイントなんかはどうするんや。

Q「前もって、その釣り場に詳しい人に聞いて行くか、現場に着いてから船頭さんに教えてもらうことが多いと思いますわ。」

というても、釣れる磯は限られてるかもわからんわな。そこへぎょうさん釣り人が集中したら釣りにならんのと違うかな?

Q「それは言えますね。」

情報から入ると、そういう危惧もあるわけや。『釣れてる、釣況よし』と聞いたら、データ指向の釣り師なら誰でもそんなところへ行きたいんでな。釣り人が多すぎて、よい磯には上がれんこともあるんと違うか?

Q「うーん。確かにそういった類の経験があります。」

そんな時はどうした?

Q「A級の磯は諦めて、他の磯でお茶をにごして帰ってきたこともありますねぇ。」

ふーん、A級磯が一杯ならB級磯を狙うというようなことは考えんかったんか?

Q「いやぁ、よく知った釣り場ならそれもできますけど、、、。」

そうやろう?様子がわからん釣り場やと、そうなってしまうことも多いと思うな。

そやけど、チヌが乗っ込みやすい地形とか条件というんか、それを知っとれば、初めての釣り場でも何とかハンデをカバーできるはずや。

Q「乗っ込みやすい地形、ですか?」

環境と言い換えてもええけど、正確に言うたら、まぁ地形と環境やろうな。

Q「乗っ込みやすい条件などというものがあるんですか?」

絶対的なものというんはないかもしれん。そやけど、チヌといえども、どこでも釣れるもんとは違う。釣れるところは海況がよっぽど変化せん限り、毎年同じように釣れてるはずや。

Q「そうですねぇ。だからそんなところはチヌ場としてみんなが知ってるわけでしょう?」

そうや。ということは、チヌにとっては何か良い条件が整ってる場所やから。とは考えられんか?

Q「あー、そうか。言われてみますと、なぜかはわかりませんけど、チヌにとって住みやすいというか、いきやすい何かがあるからでしょうね。要は『生活しやすい何か』を知る必要があるわけですね?」

そやろな。

Q「何ですそれは?」

そらぁわしにもわからん。

Q「いやぁ、松田さんなら知ってるはずですわ。出し惜しみせんといてくださいよ(笑)」

チヌに教えてもらったことがないんでなぁ(笑)そらまぁ冗談やけど、確実、絶対的な答えというんはわしにもわからんのよ。ただ、考えられる一番の理由は餌やろうな。

乗っ込みチヌは、越冬で減った体力を取り戻すんに貪欲なままで餌をあさるけん。餌が豊富な場所を選ぶんやと思うわ。

Q「なるほど。しかし餌場と言ってもどんな場所が餌場になるのか、何を好むのかとなると難しいのと違いますか?」

そらぁ、チヌの餌を特定しようとすれば難しいかもしれん。そやけど、チヌは雑食やからな。動物性のもんでも植物性のもんでも食う魚やけん。それほど神経質に考える必要はないと思うけどな。それよりも、食物となる貝類やとか、小動物、海藻なんかのある場所を考えたほうがええやろう。

Q「たとえば?」

海の中の生き物といえども、太陽光線が必要なはずや。特に海藻とか貝、小動物はそうと違うか。海の中で太陽光線が完全に届くんは比較的浅いところやわな。そやから、チヌの餌場となるんは浅い場所やと考えてもええのんと違うか。

Q「どのくらいの深さでしょう?」

そらぁその釣り場ごとで違うてくるはずや。要は餌となるもんが出来るだけぎょうさん生息してるところが良いはずや。

Q「じゃあ餌場となるようなところを捜せばよいわけですね?」

いや、そう簡単にはいかん。

Q「えっ!違うんですか?」

チヌ、というよりも、魚にとって一番真剣にならざるを得んのが餌やろう、という説明をしたんや。ところが乗っ込みチヌには、それに匹敵するか、もっと重要で切実な問題があるはずなんよ。何やと思う?

Q「うーん、、、生きのびることですかね。」

近いな。難しく言うたら種の保存ということやろう。簡単に言えば、産卵するということや。

種族保存の本能が強いから、産卵のために浅場まで乗っ込んで来るはずや。

Q「その時期が春先?」

うん。地域、場所によって違うとは思うけど、ほぼ3月から6月の間が産卵の時期になっとるな。

前にも話したと思うけど、産卵のために乗っこんでくるチヌは無垢やけん、釣りやすいんでな。しかも、産卵するぐらいやから魚体も大きいのが揃うとるけん、どうしても狙いとうなるわな。

Q「じゃあ、どこから乗り込んでくるチヌのことを乗っ込みなどと呼ぶんです?」

わしは深場から乗っ込んでくる、と判断しとる。君はグレ釣りをするやろ?

寒の時期もやると思うけど、水温が高いときと低いときと比較してみて、グレ狙いの場所は変わらんか?

Q「寒の時はグンと深いところを狙いますけど。」

なんでや?

Q「浅場は水温が低下して住みにくいから、水温が比較的安定している深場へ移動すると考えるためですわ。」

チヌかておんなじよ。チヌにはチヌの適水温があるけん、水温が落ちこんできたら、水温の安定した深場へ移動するんや。それが春先になったらまた浅場へ乗っ込んでくるけん、チヌは深場から乗っ込んでくる、と言うたんよ。

Q「わかりました。しかし、ちょっと乗っ込みチヌの釣り方の話から逸れてきましたね。」

いや、そやないぞ。満足なチヌ釣りをしよう思ったら、チヌのことをよく知っとかんと出来んわな。もちろん、乗っ込みチヌといえども例外と違う。そやからチヌが季節ごとにどんな生活状態を取るんか知っとくためにも、今まで話してきたことは、乗っ込みチヌ釣りに必要なんよ。

Q「そうでした。じゃあ整理してみますと、チヌは冬の時期は深場で過ごして、春先になったら産卵のために浅場へ乗っ込んでくる、という結論でよいのですね?」

それにもう一つ見逃したらいかんことがあるな。

Q「餌のことですか?」

いや、違う。産卵する場所や。浅場というのは産卵場所の総称や。チヌは、場所を選ばんとどこでも卵を産み落とすんとは違うけん。海中の物に産み付けるんよ。

Q「とすると、岩礁かなんかに産卵するわけですか?」

岩礁に産みつけたというんはあんまり見たことがないな。海草やな。なかでも藻に産みつけるんが一番多いんと違うか?

Q「あの岸近くに生えている藻に?」

うん。しかもビッシリと生えているような藻群に産卵することが多い。そやから、乗っ込んできたらまず餌を捜し回って体力をつけるわな。その間に体内で卵を爛熟さして、産む時期になったら藻群の中に入ってしまうんよ。そやから乗っ込みチヌを狙うんやったら藻群のある場所を捜すんも一つの手段やな。

Q「しかし、わざわざ危険をおかして岸近くの藻に産卵に来なくても深場の藻に産めば良さそうに思いますけど。」

そら、あかん。できんな。チヌが越冬するような、水温が安定している深場には藻はないからよ。藻を含めた海草類は、太陽光線が十分に届かんところには生えん。その他、海流の強いところとか、波の荒い場所なんかにも生えにくいわな。そやから比較的波の静かな内海の浅場で藻類を見ることが多いんと違うか。

Q「しかし、なんでそれほど藻に産みつけたいんでしょうねぇ。」

藻の中は安全やとチヌは知っとるんと違うかな。藻群の中には大型の他魚は入ってこんけん。卵が孵化して稚魚が生まれても、他魚に襲われる危険が少ないわな。

藻に守られるような形で成長できるはずや。それも理由の一つになってるのと違うかな。

Q「納得できますねぇ。これからは、乗っ込みチヌを狙う場合、藻のあるところを捜すようにしますわ。」

うん。そやけど、闇雲に藻場ばっかりを捜してもあかんでな。

Q「といいますと?」

さっきからずーっと話してきたやろう。深場とか浅場に乗っ込むとか。

それを考慮に入れて、合わせて判断せんといかんでな。

Q「えっ、深場で浅場で藻ですか?」

そうや。一つずつを切り離しても意味がないんよ。

三つが揃った場所が最もよい乗っ込みチヌの釣り場になるんや。

Q「どういうことですか?」

深場というても、磯際から急深になってるようなところはあかん。磯から50~60m、もっとあってもええけど、沖までは浅場になっとって、その先がグーっと深うなっていくような場所やな。そのうえ、磯近くでもええけど、浅場に藻群があるようなところを捜すんよ。

「なるほど。『三つが揃った』というのはそういうことだったんですか。だったらこの磯もそうですねぇ?」

うん。わしもここらあたりの磯は初めてや。そやけん、どこが一級磯なんか知らんのよ。ただ、見た限りでは「三つが揃うた」磯や。乗っ込みのチヌ釣り場としては良い磯やと思うけどな。

「なるほど、だからチヌが釣れてる?」

まぁ、場所のこともあるけど、磯が良くても、釣り方を間違うとったらチヌは釣れんでな。

「その点はよくわかります。それにしても、乗っ込みチヌを狙うにも、このように、磯選択をする場合にも必要なことを教えてもらっていますと、これからの釣行が心強くなりますわ。」

そうかもな。

 


会長のチヌ釣り理論を書かせていただいてから今回で9回目。

乗っ込みチヌについての釣り講座はこれで一旦おしまい。

只今乗っ込みシーズン真っ只中です。

是非皆さんにとって、より面白い、楽しいチヌ釣りが出来ますように。

 

ー松田稔のグレ・チヌ攻撃的戦術 1994年出版より引用ー

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コメント: 2
  • #1

    ジャン (水曜日, 15 5月 2019 22:05)

    9回のチヌ講座。
    ありがとうございます。
    エムアンドエム様と会長様の会話の
    やりとりが、とてもわかりやすくて、
    私もその場で聞いているかのような気持ちになれました。
    人に伝える事の難しさ大切さを、学びました。
    これからも気持ちのこもったブログ
    楽しみにしてますね。

  • #2

    有限会社エムアンドエム (金曜日, 17 5月 2019 15:36)

    ジャン様

    コメントありがとうございます。
    とてもわかりやすいと仰って頂けて良かったです。
    これからも、随時ブログをアップしていきますので、
    楽しみにお待ちください。