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少しでも多くの人が魚釣りを好きになってほしい

巨大尾長グレを釣る方といえば飛びぬけての会長ですが

そろそろ会長の釣り講座もグレに移行していきましょう。

 

と、、、その前にまずはこちらを皆さんの心に入れて頂きたいと思います。


「条件は厳しいが、グレは多い。そんなグレを釣る為には」

 

〇条件はこれからますます厳しくなる

 

これからは、グレの数がますます少なくなる。道具がよくなり、参考書がたくさん増えるのに伴って、グレはどんどん賢くもなる。すると、釣ることがいよいよ難しくなる。

一日のうちの短い時間しか食わないから、その時に釣ることができれば釣果は持って帰れる。

釣る事ができなければ、釣果はない。

釣りをもっと面白いものにしたいのなら、その短い時間に1尾でもたくさん食わせることを考えなければならないだろう。

地球上の生物のうち、人間だけが進んでいるのではない。魚も変わっている。

何度も言うように、昔のような人間を知らない魚はもういない。

人間の怖さ、鈎の痛みを知っているグレばかりだ。

そんなグレを釣るには、今までのような「釣れる釣り」ではなく、「釣る釣り」

つまり食わせることを考えなくてはならない。

そのためにはコンピューターに色々な条件を設定するように、海の中でさまざまな条件を設定することが欠かせない。

頭の中で絵を描き、この潮でこの鉛だったらL がきつい、もうちょっと小さい鉛だったらLが少なくなるだろうというように、、。


〇今後もグレは変化してゆく

 

人間は今のビルの生活に慣れている。スモッグにも対応している。

それと同じように、グレも環境の変化に対応してゆく。対応できるからこそ、今も残っている。

対応できなければ生き残ってないだろう。チヌも真鯛も同様に、対応できない種はどんどん絶滅してゆく。

ただし、今後釣り人が今の10倍に増えたとしよう。そのとき、グレは人間の支えなしには生きてゆけなくなる可能性がある。

生物には、必要なものを生み出す器官が体の中にある。それが、本当は餌が10しか必要ないのに、100も200も与えるようになると、体内の生成機能が失われる可能性がある。

グレがそうなれば、必要な栄養は人間から与えてもらうしかない。

よく知られた栄養素の一つ、ビタミンは微量で十分なのだが、普通の動物の体内では生成することができない。外界からしか摂取するしかなく、それが不足すると欠乏症が現れる。

ところが、かつては、大半の生物が自分で生成していたという。

外部から摂取する習慣がついて、体内のビタミン生成機能が衰え、ついには消滅したのだ。

それと同じ現象がグレのみならず、海の魚に現れるかも、、、。


〇グレはまだまだ多いんとちゃうか

 

水産資源が減ったと叫ばれて久しい。グレもその例に含まれている。

それを否定する釣り人はまずいないだろう。最近、これだけ釣りにくくなったのは、グレの絶対数が減ったからだと99.9%の釣り人が感じている。

しかし、松田は必ずしもそれに同調しない。

「今でも、グレは結構おるんちゃうかな。おるときは無茶苦茶おるで。釣り人が釣る数は知れとる。網なんかだったらトン単位で獲るもんな」

磯の上から釣ろうとしたとき、グレが一尾しかいないのだったら絶対に釣れない。

100尾も200尾もいて初めて、5尾や10尾が釣れるものなのだ。

愛媛県の湾など、小グレはおびただしいほどの数がいる。

それが大きくなると湾外へ出て行くのだろうが、すべてが成長するわけではないにしろ、グレの数が激減したとは考えられない。

昔はよく釣れた・今は釣れないという事実を、このように見たらどうだろうか。

 

松田が若かりし頃は、一日に50~70尾のグレを釣っていたという。

単純に、グレの数が多かったから、それだけ釣れたのだと結び付けてはいけない。

なぜなら、当時と今とでは件が違っている。

まず、昔は夜明けから日没までと釣りをする時間が長かった。今は時間が制限されている。

昔は釣り人も少なかったから、磯を自由に選ぶことが出来た。今は、抽選がある、ジャンケンもある。好釣場に上げれる可能性は少ない。

したがって、大昔にしても、今ほどの釣り人口がいたら、50尾も70尾も釣れなかった可能性がある。ただし、グレの型が小さくなったことは松田も否定しない。

30㎝ぐらいのグレは波止にいくらでもいたし、磯は40~50㎝ばかりだった。それが、今は、、。


〇釣りを通して返してやりたい

 

松田自身は、それほどグレの数が減ったとは感じていない。

ただ、釣りにくくなったとだけはいう。

このへんに、我ら凡人との大きなギャップがある。神様と人間の差といっていいかもしれない。

つまるところ、人間は神様に導いてほしいと願っている。

それに対して松田はこう言った。

「わしは魚釣りを愛してきた。これからも愛したいと思う。なら、これから始める奴とか、今一生懸命やっとる若い奴らに、もっと楽しんでもらえるようにしてやらなあかんと思う。

100倍とはいかんけど、10倍か20倍は楽しんでほしい。

わしは、釣り人が減ったらごっつい寂しいと思うでな。」

松田の技と人柄を慕って集まった人に対しては

「人間として生まれた自分を愛してくれたんなら、自分も返してやりたい。

酒で知り合うたんなら酒で返せばエエ。魚釣りで知り合うたんなら釣りで返せばエエ。

魚釣りがもっと好きになるように、よく釣れるように、楽しくなるようにしてやりたい。

そのためには、上に立つものがしっかりせんとな。」

 

松田の釣り技を一つの形として残しておくために。

それもまた、上に立つものの努めだと松田は考えている。

ただし、本は所詮、本でしかない。松田の技の基本の部分でしかない。

 

最初はすべて頭の中に入れて、それから試し、自分に合うもの・合わないものをふるいにかけてほしい。松田もそれを望んでいる。

松田がグレ釣りを始めたころは、教えてくれる人も参考書もなかった。

すべてがゼロからのスタートだった。

「そんなんがあったら、わしは今ごろ振りちぎっとるわい!」

 

遠回りをして遠回りをして遠回りをして、やっとここまで辿り着いた松田の本音かもしれない。


さて、それでは次回からはいよいよ松田稔のグレ釣りの講座を始めていきましょう。