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撒き餌の良し悪し、、撒きゃあエエんやない

今週もやってまいりました。会長の釣り講座!!

前回はオキアミについて。

早く実践編に参りたいのですが、、、会長は「まぁまぁ」と焦る様子無し。

 

「オキアミの事はわかったか?今のグレやチヌ、なんでもオキアミを食うだろうなぁ。

でもオキアミ食うけんって、ただオキアミ撒いたらエエっちゅう話ちゃうぞ。

そこを注意しといてもらわなんだら」


「長所があれば短所もある。オキアミの短所とは」

 

 

〇オキアミは消化が悪く生産能力が劣る

 

現在のグレ、チヌ釣りでは、オキアミの存在が欠かせない。

なくてはならないものなのだが、難点もある。

良薬は毒薬と紙一重というように、オキアミも使い方を知っておかなければ

魚を釣れなくしているのと同じことになる。

その最大の欠点は、消化が悪いところにある。

アカアミだったら、朝撒いたそれを食っても、昼釣ってみると、魚はほとんど消化している。

だが、オキアミはそんなわけにはいかない。

人間だったら胃腸薬を飲めばいい。

しかし、魚にはそれができない。結果として、生産能力のダウンにつながる。

松田いわく、

「だから、赤ジャコ(鯛)が育たんのや。変な魚ばかり育ってからに」

それでも魚はオキアミを食う。

松田は次のように例えた。

「毎日、麦飯とダシの入らん味噌汁と大根、梅干し食っていた人間が、銀シャリといっぱいダシの入った味噌汁にいろんな具を入れて、カニやウニやマグロ食うたりしてみろ。もう戻れるかいや。それと一緒や。」


〇オキアミを食べ過ぎると活性が落ちる

 

昔の名残りか、いまだに釣りを始める前、20分も30分も時間をかけて撒き餌だけをする釣り人が多い。中には、グレが湧いてくるまで竿を出さないという伝統的な釣法を受け継いでいる釣り人がまだいる。

松田はそれを評して、

「確かに、魚が少なくて適温やなかったら、出てくるまで時間がかかる。人が少なく、毎日上がっていないところも時間がかかるやろうな」

しかし、逆のケースもある。

適水温で数が多かったら、魚が出てくるのは早い。それなら、前もって撒き餌する必要はない。

どちらにしろ、松田はオキアミの撒き過ぎには非常に気を遣う。

※オキアミ科ナンキョクオキアミ、、、オキアミには数種類あるが、釣り餌に使用するものは南極海にしか生息しないからこの名がある。全身がタンパク質の固まりといってよく、そのため非常に消化が悪い。また、長時間日光が当たると黒っぽく変色する。腐ると強烈な悪臭を放つのもタンパク質の特徴

 

それが、エサ盗りがたくさんいるのなら、海面に落ちた時点で大半が食い尽くされる。だから、撒き過ぎにはならない。が、エサ盗りもいないのにそれをやると、結果、撒き過ぎることとなる。

オキアミを撒き過ぎるとどうなるのだろう?

まず魚が浮いてこなくなる。

また、活性が低いと、もともと消化の悪いオキアミが、さらに消化が悪くなるから、

一段とエサを食わなくなる。

これはどんな魚でもいえる。グレに限らず、アマゴでも、また庭の鯉でも変わらない。

バラっとエサをやると、最初はみんな食う。だが、そのうち食わなくなり、

消化器官の丈夫な鯉だけがチョロチョロする。

そして、30分くらいするとまた食い始める。胃が慣れるというか、満腹感が薄れて、、。


〇グレが浮けば5分の1に減らす

 

五体満足なオキアミは、刻んだものに比べると確かに沈むのが速い。

一時に食べきれないほどの量があると、グレはそれを追いかけて潜る。

必然的にタナが深くなる可能性がある。

松田もその事実を否定しない。

だから対策を講じる。

見えるほどのグレが湧いたら、撒き餌は通常の5分の1に減らすのもその一つ。

回数はそのままで、1尺分の量を減らす。

活性が低く、やっと見えたときなどは、同礁者に口やかましくそれを言う。

せっかく活性が出たのに、再びそれを衰えさせないための処置といえるだろう。

グレはもともと臆病な魚だから、出来る事なら危険性の高い水面近くには浮上したくない。

それを、撒き餌でおびき寄せるのだから、常にエサが不足した状態におくことが、

人間にとっては都合がいい結果を招く。

さらに、深いタナを攻めるときは合わせるのが難しいから、1尺分の撒き餌を3回に分けろという。

撒き餌を3杯撒けとはいってない。

タナが深いのは活性が低いからで、そんなグレに大量の撒き餌をすれば、さらに活性が低くなるのは分かりきっている。

回数を増やせば、1回分の量を減らすことで全体量の調整をしなければならない。

またオキアミが沈む速度に差をつけることで、魚の浮上を促すと前述したが、

3回に分けて撒き餌するのも同じ効果を生む。

水深10mにいる魚をいきなり5mに浮上させるのは難しい。

しかし、9m、8m、7mと段階を追えば不可能ではない。

 

多くの釣り人が大量の餌を撒いた翌日、グレの活性が著しく衰える。

そんな時はどうすれば良いかを松田に尋ねたところ

 

「撒き餌にサクロン(胃薬)混ぜたらエエんちゃうか」 だそうです。


ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より引用ー