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竿の角度を保持するために糸を出すこともある

皆様お待たせいたしました。いやお待たせしすぎたのかもしれません。

最近この言葉が自分の中でブームです。

そんな事よりなんと5か月ぶりの会長の釣り講座。あっという間に月日が過ぎてしまい気が付けば秋磯シーズンが始まろうとしています。

皆様の磯釣りに少しでも役に立てることが出来れば!

前回の釣り講座は糸の強度のお話。今現在は技術の進歩により2倍以上の強度と根ズレの強さを持たせることができるようになりました。これも全て会長の釣りの経験と努力が生かされていると思います。

前回の講座が気になる方はこちらをクリック!

それでは本日の釣り講座始めましょう。

今回はなるべく糸を出すな!という会長、しかし出すときもあります。

それはどういった時か!?今は当たり前のLB(レバーブレーキ)の前身を開発した会長のエピソードも交えて。それでは始めましょう


「片手で逆転させたいからLBの前身を開発した」

 

〇片手で逆転させたかった

 

下の写真のリールは松田が改造したものだ。

昔懐かしいインスプールタイプでメーカー名はツルーテンパーという。

アメリカ製で、当時は一番軽いリールだった。

このリールの足を切るのに、「ごっつい度胸がいった。当時は高かったんや」

この言葉から若かった松田がこのリールを買うのになけなしの金をはたいたことは想像がつく。

しかし、なぜリールの足を切らなければならなかったのかという疑問は残る。

それを理解するには、当時の背景を思い出してもらわなければならない。

エサは元気のいいエビを使い、海の中でもピンピン跳ねてもらいたいから、ハリスは細く、鈎も小さかった。それを、足元からハケに入れる。撒き餌などまだない。

糸が細いから強引な取り込みは出来ず、出したり巻いたりを繰り返し、長い時間をかけて取り込んでいた時代だ。スピニングはあったものの、糸の出し入れが難しいから、誰一人使っていなかった。木ゴマリールが全盛だったのだ。

しかし、両軸タイプのリールでは攻められる範囲が限定される。なにしろ、仕掛けが飛ばない。

糸の出し入れが簡単に出来るスピニングができないか。

松田の発想はそこに向いた。ストッパーを外せばスピニングでも正転・逆転はできる。問題はブレーキにある。どうやってブレーキをかければいいか。

インスプールタイプなら、外側から指で押さえたらいい。ただし、外国製だから、リールの足が長い。

左手でないと押さえられない。

しかし松田には竿を握る手でブレーキをかけたいという欲求があった。左手ではとっさの場合、間に合わない。かといって左手を常時リールに添わせるわけにはいかない。竿を持つ右手の動きが制限される。

リールの足が長いのなら短くできないか。その発想は自然の成り行きだったのだろう。

高価なリールの足を切り、自分の指の長さに合わせて縮める。そして、鉄心を入れてもう一度接続する。これが抜群の効果を生む。あっという間に知れ渡り、松田は頼まれて、来る日も来る日もリールの改造に明け暮れた。松田が24~25歳の頃だった。

〇青物や真鯛は糸を出す

 

いくら糸を出さない松田でも、グレ以外の大物が食えば糸を出さざるを得ない。特にヒラマサやブリのような青物は瞬間的に走る。あの走りは止まらない。グレ用の道具、グレ用の仕掛けを使っていたならなおさらのことだ。それでも止めようとすれば竿は根元から曲がり、弾力を失ってしまう。

ブリの船釣りではそれなりに道具も仕掛けも準備しているから、糸を出すことはしない。

しかし、魚が走っている最中は絶対巻かない。止まったところで初めて巻く。それが分からないままでやると糸が飛ぶ。瞬間的に走る傾向は真鯛にもある。60~70cmクラスになると、最初はダーッと走る。大体3回走ったら止まるが、80㎝になると4回は走る。

ただし、同じ80㎝でも、元気のいい魚もいれば、痩せた真鯛もいる。痩せた魚は元気がなく、こちらに頭を向けたら首だけ振ったりする。

魚にも個体差があり、単純にサイズだけで引きの強さは規定できないことは松田も認めている。

「チヌでもごっつい時があるぞ。五島で掛けたチヌは尾長よりごっつかった。12~1月は元気がええからブイブイ行かれる。そうかと思うと、大きいくせに全然行かんときもあるしなぁ」

〇グレでも出すときがある

 

グレは出さないとはいえ、やはり例外はある。松田がLBを使うのは、なにも青物や真鯛の為だけに備えているのではない。

では、どんなときに出すのか。

また、どんな出し方をするのだろう。

まず最初の疑問に対する答え。

「グーッと締め込むわな。そん時はこっちもこらえとる。ほんで、尻尾振るのが伝わってくるんや。小さくても。次に力が緩んだら絶対走るっていうんが分かる。まともに尻尾振るからな。そんなときは出す」

どうやらこれは神様でないと分からない範疇らしい。松田のように魚を取るときはいつも締め上げることを長年続けて初めて分かるものらしい。やはり経験ということか。

 

2番目の疑問については

「竿の角度を変えるだけや。魚の位置は変わらん」

つまり、これ以上走られて竿が90度を保てなくなったとき、しかもグレがまだ走りそうだと判断したとき、初めて糸を出すのだ。それも、竿の角度を保持する範囲で。

ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より一部引用ー