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口太ならオセン、尾長にはキツがつきもの

さて、先日の伝心伝承202回目、なんと会長の船釣りシーン!ご覧頂けましたでしょうか。

なんとかマアジを釣ろうと楽しんでおられました。

さて、アジ繋がりという事で今回の釣り講座はエサ盗り対策「アジ」について

ちょこっとお話しましょう。

ちなみに前回のブログはこちらをクリック!


「対象によって釣場が変わり、エサ盗りの種類も変わる」

 

〇口太釣場は浅く、尾長釣場は深い

 

本当にエサ盗りをかわそうと思えば、魚種を確認して、それぞれの習性を利用しなければならない。この、魚種の確認をするというところで、松田なりの見識がある。つまり、尾長釣りか口太釣りかによって、エサ盗りの種類がある程度限定されるということだ。

口太釣りは概して浅く、シモリが多い。

尾長は小さいのしかいない。せいぜい35㎝まで。

そんなところはオセンが多い。逆に言えば、オセンが多いところで尾長の40㎝クラスがバンバン釣れることは、全く無くはないが、非常に少ない。

これが尾長釣場なら、水深があって潮通しがいい。だから、エサ盗りはキツやサンタになる。

オセンもハゲも少ない。他に、時期による違い、その釣り場でよく使われるエサの違いによっても、エサ盗りの魚種は異なる。

アジ、サバは一年中いるわけではない。夏の後半から初冬にかけて多い。

年回りによっても、数は全然違う。

それに比べて、オセンやハゲは一年中いる。

やはり、オキアミを撒く影響と考えられるー松田はそう言う。

赤アミを主力に撒く地域だったら、赤ジャコとかタカベがメインになる。

〇かわせんことはないがアジはめんどいぜ

 

前述したように、この魚は一年中いるわけではない。だが、大量に発生すると、このアジほど面倒な魚はいない。なにしろ、足が速い。だから、分離できない。

アジが嫌がる刺し餌を使えば話は簡単だが、撒き餌も刺し餌も同じものでないといけない松田は、そんなことなど聞く耳を持たない。

その松田が考えついたアジ対策とは、次のようなものだった。

まずアジの種類を見る。

黄色いアジはシモリについている。回遊性ではないから、オセンと似たやり方でなんとかかわしようがある。

一方、青みの強いアジは回遊性。

松田いわく、「こいつが多いときは釣りをやめて寝るに限る。せっせと釣って干物にしてもエエ」

が、松田はかつて、これさえもかわしたことがある。

【アジの壁】を作って遮断したのだ。

その時撒いたオキアミは、なんと1日に6反(1反は3㎏角×16=48㎏)という。

「今はできんで。あのころはな、一生懸命勉強しよったからな。餌持っていくのが大層だとか考えてないで。なんとかクリアせんという頭だろう。銭とか、疲れるとかなんも考えとらん。グレがおるのは分かっとるから、なんとか釣ろうとしていた時代や」

48㎏×6=288㎏のオキアミを松田はひたすら撒いた。半分、無意識で撒き餌するから、杓も小さいものを自分で作った。

釣りをする前に①②③の撒き餌を続けていると、松田の体の動きを見ただけで魚は集まるようになる。アジの壁ができてしまうと、外から入ってこれなくなる。そこで、手前を釣るとグレの口まで刺し餌が届く。

撒き餌が途絶えると、アジはカベの内側に入ってくるから、①②③の撒き餌はひたすら続けなければならない。だから、実際に釣りをする時間は短い。

やはり、エサ盗り対策の基本は撒き餌の集中という事になる。

 

〇グレが減るとアイが増える

 

近年、アイが異常な勢いで増えている。

本来は夏魚なのに、12~1月でも釣れたりする。地球温暖化の影響で、冬でも水温があまり下がらなくなったためと考えられる。

ところが、この魚も、松田がグレ釣りに行く四国の磯には少ない。かつて、異常低温の為、瀬戸内海のアイが大量に死んだからだ。

もう一つ、汚れた海には住めないという理由もある。

アイ=アイゴ科アイゴ

愛されている地域もあるが、アンモニア臭いのと毒刺のせいで、総じて人気はない。

鈎掛かりすると強烈に抵抗するため、どんな大物が掛かったかと期待するが、やがて竿先を叩き始めてがっかりする。

グレとアイはおもしろい関係にある。

食性がよく似ていて、メインは植物性だが、動物性も食べるという雑食性だ。

そのせいだろうか、共生はしない。

グレが多いところはアイが少なく、逆にアイが多い釣り場はグレが少ない。

グレの方が動きは速いから、自然界ではアイの口にあまりエサが入らないのだろう。

ところが、グレが減ると餌を食べやすくなる。すると、アイが繁殖する。

自然界では絶対的なエサの量が限られているから、両方を満たすことができない。片方の分しか満たせられない。だから、勢力の強いほうが勝つ。

そのいい例がやはり四国の日振に見られる。

かつては、すぐ近くの由良には多かったのに、日振でアイなどを見ることは一度もなかった。

恐らく、グレがたくさんいたからだろうーーー松田はそう推測する。

ここ1、2年、イワシの数が減ってきた。

反対に、アジが増えている。イワシもアジも同じ海中のプランクトンを食べている。

グレとアイの関係に似ているとはいえないだろうか。

 


ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より引用ー