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海の中は100%読めないから撒き餌の保険が必要

「釣りは、人に勝ったから上手いんやない。

人よりようけ釣ったから上手いんでもない。

自分で食わせたか、それとも勝手に釣れたのかという世界や」

 

そしてこう続ける。

「釣れたというのが100尾おっても、自分で食わせた3尾よりも下や。

前に進むんだったらな」

 

この写真は1996年、第15回G杯がま磯チヌ釣り選手権にて会長が見事優勝、

当時がまかつ史上初のV3を達成しチヌのトーナメントから引退を宣言した大会です。

前回のブログにシロモッチとの2ショットも掲載した事ですし、今回はその流れで釣り講座を。

前回のブログはこちらをクリック!

 

今回はこのトーナメントで実際に会長が行った釣りの方法を参考に釣り講座を始めましょう!


「ただし、いつも保険に頼ってはいけない」

 

〇無駄な撒き餌はしない

 

1996年5月20~21日に行われたG杯チヌの決勝において、その一つの事例が見られた。

2尾対1尾対0尾と、松田は1尾リードして3ラウンドを迎えた。

潮スジに仕掛けを投入し、その後方に撒き餌を打つ。

基本的な攻め方だ。

ただ、まったく関係ない撒き餌があった。

図でいえば、A、またはBのシモリ際に打っていたのだ。

3ラウンドである以上、すでにその足場では対戦者2人が竿を出したことになる。

したがって、本命の潮スジではチヌのアタリが無いまま時間が過ぎてゆく。

その間、ずっと松田は潮スジとは関係ない撒き餌をシモリ際に続けている。

残り20分を切ったとき、初めて松田は、シモリ際に続けていた撒き餌の近くに仕掛けを投入した。

一発でウキが消し込み、チヌが食ってきた。

これがダメ押しとなり、松田はG杯チヌのV3を達成した。

〇撒き餌には保険が必要

 

シモリ際に打った撒き餌を松田は『保険』と呼んだ。

本命で釣れないときの予備と考えていいだろう。

グレ釣りでも、この保険の撒き餌は登場する。

撒き餌は出来るだけ少ない量でピッタリ合わせ、それで食わせるべきだというのが松田の信念ではあるのだが、なにしろ水中のこと。

予測できない要素が限りなくある。完璧に読むことは不可能といってよい。

松田に言わせるとこうなる。

「潮の方向がコロコロ変わるからな。水道の蛇口を開けて、3㎏の水圧かけて、バケツいっぱいに水入れるんとは違うんや」

シモリの問題があるし、潮が当たる角度もある。上と下で流れが違うこともたびたびある。水位も上がったり下がったりする。

これが、昔のように、魚がたくさんいるのなら、保険は必要なかったのだろう。

人間が与える餌の量がはるかに少なかったから、水面からどれくらいという計算ができた。

今は違う。下からどれくらいという計算をしないといけない。

下に行けば行くほど、不測の事態が発生する可能性は高くなるし、誤差も大きくなる。

だから、保険が必要になる。

〇保険の意味をはき違えるな!

 

ただし、保険の意味をはき違えてはならない。

1シャクで合わせる自信がないから、常に2シャクも3シャクも撒き餌することを続けていると、それが常態となり、前に進めない。チヌならいい。

だが、グレではいけない。

チヌの保険とグレの保険は全く意味が違うのだ。

グレの場合は、答えを出すための保険。松田はそう言う。

「釣りは大方が保険やぞ。保険とは、確実に答えが出ることや。答えが出んのだったら保険にならん。そのためのもんや」

最初、慣れてないうちは、3か所程度に保険をとどめておく。

松田いわく

「下手なうちは、あまりたくさん保険をかけると魚が散る。

上手くなったら保険を増やしてもエエ」

単純な流れのように見えても、手前、中、沖、または右、中、左と幅を持たせて3か所に撒き餌する。そして、その3つを追いかける。

もっとも図のない説明では分かりにくいだろう。

 

次回、詳しく解説する。


ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より引用ー