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湧昇流を攻略するには潜る潮に仕掛けを乗せる

いやはや前回の釣り講座からまたまた3か月経ってしまいました。

最近弊社のYouTube配信で「これぞ鬼才」コーナーを立ち上げまして、その配信で松田稔を初めて知る方は「なんだ?このおっちゃん?」と思うかと思いますが、この方が釣りの世界において確立してきたものはとても大きいです。

むしろ釣りの世界の松田稔を知ってる方からすれば、あれはあれで人間味あふれる鬼才の姿がまた良いかと思います。

ただ、あの配信だけだと、どうしても偏ってしまいますので(笑)

会長の釣り講座!いっときましょう!

前回の講座は色々なジャンルの釣りをしてこそ釣りが上手くなるテクニックを見いだせる!でした。

気になる方はこちらをクリック!そして今回の講座はこちら!

 

グレは活性が高いのに、それ以外の条件が悪くて釣れないときがある。

だが松田は、グレに食欲がある限り、絶対に食わせることはできると豪語する。言葉だけでなく、松田は実際に釣ってきてもいる。ここでは悪条件を克服するテクニックを紹介する。


「昇る潮があればその近くに必ず潜る潮もある」

〇速い潮が上に向かうのが湧昇流

 

松田は長崎県の平戸島を訪れた。目的は平戸島南端に近い宮ノ浦の磯でチヌを釣ることにあった。

午前中は港に近いところで4尾のチヌを釣り、午後からは平戸島の南東部にある三のハエのハナレに移動する。ここは足場が低いため、満潮前後は波をかぶることから、潮がある程度引いてからでないと釣りが出来ない。やがて下げ潮が本格的に流れ始めた。この一帯は、上げ潮は緩いものの、下げ潮がガンガン通す。松田の前面も潮が走り、湧昇流が発生した。これは、速い潮が障害物に当たって上に向かう流れで、そのため海面は2~3㎝から5㎝は盛り上がる。カガミ、ボウズと呼ぶ地域もある。

魚影が濃いところではその中にいる魚がよく見える為、釣り人はやっきになってそれを釣ろうとする。

しかし、仕掛けは思うところに行かず、ましてや、撒き餌も見える魚の口元には届かない。

下から上に向かって流れているのだから、そこへ上から仕掛けを落とそうとしても無理な話だ。

軽くはねのけられ、とんでもない方向へ追いやられる。

さらに湧昇流は生まれたり、消えたりする。そのたびに現れる位置は変わる。

松田がどうやって、その厄介な湧昇流を攻略したか。

〇潜る潮に乗せるためビシを追加する

 

当初松田は本流に引かれる潮を釣ろうとした。しかし、湧昇流に巻き込まれると仕掛けを押し上げられ、まるで安定しない。そこで湧昇流の手前の狭い範囲を集中して攻める、が、ウキ下が浅いと全く魚の反応が無く、ウキ下を深くすると、今度はエサ取りが邪魔をする。

その時点で湧昇流に本気で取り組む気になったようだ。

引かれる潮に仕掛けを投じる。それから撒き餌を入れ、道糸を張って、出来るだけ右方向へ流そうとしている。ウキの浮力以上のビシを使っているが、湧昇流の影響を受けて仕掛けが舞い上がっているから、ウキは完全には沈まない。沈み加減で流れてゆく。

松田は仕掛けを巻き取り、ビシの位置を修正してまた投入する。今度はウキが沈んでいった。潜る流れに乗ったようだ。竿が曲がる。そしてグレも当たった。

本流が少しずつ緩み、それに伴って湧昇流の勢いが弱くなる。松田はそれに従って、ウキ下を深くする。上潮は速いものの底潮は遅いと読み、仕掛けを張って刺し餌にウキを引っ張らせようとしたのだ。

〇カギはビシにある

 

上に向かう流れがあれば、その近くには必ず潜る潮がある。刺し餌をその潜る流れに乗せてウキを引っ張らせるのが、基本的な湧昇流攻略法になる。

といっても、、周囲の流れは非常に複雑で、ウキが浮かんでいる表層と、刺し餌がある中~底層とは全く異なる方向で流れている事が多い。

したがって、刺し餌にウキを引っ張らせない限り、この釣り方はできない。

カギは、ビシにある。

刺し餌であるオキアミに水圧と流れの抵抗を受けさせ、仕掛け全体を引っ張らせるには、ビシの位置が重要である。

湧昇流という条件ではそれを強制的にやる必要があるから、通常以上にビシを大きくしなければならない。BB負荷のウキに3B、4Bを打つことは珍しくなく、三段打ち、さらには四段打ちすることもある。

この時、撒き餌は早く言えばどこでもいい。湧昇流と潜る潮の間を行ったり来たりするから、コントロールできないと言い換えてもいいだろう。

仕掛けは、本流に引かれる潮に投入する。刺し餌をウキの後方に落として速く沈め、出来るだけ速く刺し餌がウキを引っ張る態勢に持ってゆく。刺し餌が潜る流れに乗るとウキは沈んでゆく。

ウキが沈まなければ、潜る流れに乗り損なったと判断し、最初からやり直す。

湧昇流は消えたり現れたりするし、位置も次々に変わるから、一度は潜る流れに乗ったからと言って安心はできない。

湧昇流の周囲の潜る流れに乗り、本流の際まで達すると、グレが食ってくる。アタリは穂先に出る。

常に態勢を整えておき、瞬時に対応できるようにしておかなくてはならない。

ー松田稔のグレ釣りバイブル・釣ってなんぼや! 1997年出版より一部引用ー